医師監修:金光 廣則 先生
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。AGA治療を検討される方は、必ず医師にご相談ください。治療効果には個人差があります。
AGA(男性型脱毛症)の内服治療薬として、日本で広く処方されているのがフィナステリドとデュタステリドです。どちらも医学的根拠に基づいた治療薬ですが、「自分にはどちらが合っているのか」「何が違うのか」と悩む方は少なくありません。
本記事では、フィナステリドとデュタステリドの作用機序の違い、臨床データに基づく有効性の比較、副作用、そして薬の選び方までを詳しく解説します。
AGAの原因とDHT(ジヒドロテストステロン)
AGAの主な原因は、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、頭皮の毛包にある5α-還元酵素(5αリダクターゼ)によってDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されることです。DHTが毛包のアンドロゲン受容体に結合すると、ヘアサイクルの成長期が短縮され、毛髪が十分に太く長く成長する前に抜け落ちてしまいます。
フィナステリドとデュタステリドはどちらも、この5α-還元酵素の働きを阻害し、DHTの産生を抑制することでAGAの進行を食い止める薬です。しかし、両者が阻害する酵素のタイプと阻害力には違いがあります。
フィナステリドとは
フィナステリドは、日本では「プロペシア」の商品名で2005年に承認された、AGA治療薬のパイオニアです。1日1mg を経口投与します。
作用機序
フィナステリドは、5α-還元酵素のⅡ型を選択的に阻害します。Ⅱ型酵素は主に毛包や前立腺に多く存在しており、頭皮におけるDHT産生を約70%抑制するとされています(Clark RV, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2004. PMID: 15126539)。
臨床エビデンス
Kaufmanらによる大規模臨床試験(1998年)では、フィナステリド1mg を2年間服用した男性の約83%が薄毛の進行停止を達成し、約66%が毛髪の増加を認めました。プラセボ群では同期間に72%で薄毛が進行したことと比較すると、フィナステリドの有効性は明確です(Kaufman KD et al. J Am Acad Dermatol. 1998;39:578-589. PMID: 9777765)。
デュタステリドとは
デュタステリドは、日本では「ザガーロ」の商品名で2015年にAGA治療薬として承認されました。1日0.5mg を経口投与します。
作用機序
デュタステリドは、5α-還元酵素のⅠ型とⅡ型の両方を阻害します。Ⅰ型は皮脂腺や肝臓に多く分布しており、デュタステリドはⅡ型だけでなくⅠ型も阻害することで、血中DHT濃度を約90%以上抑制するとされています(Clark RV, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2004. PMID: 15126539)。フィナステリドに比べ、より強力なDHT抑制効果を持つ点が最大の特徴です。
臨床エビデンス
Eunらによるアジア人を対象としたランダム化比較試験(2010年)では、デュタステリド0.5mg を24週間服用した群は、プラセボ群と比較して有意に毛髪数が増加しました。さらに、同試験ではフィナステリド1mg 群との比較も行われ、デュタステリド群がより高い毛髪数の増加を示しました(Eun HC et al. J Am Acad Dermatol. 2010;63:252-258. PMID: 20605255)。
フィナステリドとデュタステリドの徹底比較
AGA治療の2大内服薬であるフィナステリドとデュタステリドを、さまざまな観点から比較します。
有効性の比較
Guptaらが2024年に発表したネットワークメタアナリシス(複数の臨床試験データを統合解析した研究)では、AGA治療の単剤療法として各薬剤の効果を比較しています。この解析では、デュタステリド0.5mg がフィナステリド1mg よりも統計的に有意に高い発毛効果を示しました(Gupta AK, Bamimore MA. J Cosmet Dermatol. 2024;23:2964-2972. PMID: 38725143)。
| 比較項目 | フィナステリド | デュタステリド |
|---|---|---|
| 商品名 | プロペシア | ザガーロ |
| 用量 | 1mg/日 | 0.5mg/日 |
| 阻害する酵素 | Ⅱ型のみ | Ⅰ型+Ⅱ型 |
| DHT抑制率 | 約70% | 約90%以上 |
| 承認年(日本) | 2005年 | 2015年 |
| ジェネリック | あり | あり(2024年〜) |
副作用の比較
両薬剤ともに報告されている主な副作用は以下の通りです:
- 性欲減退:フィナステリドで約1〜5%、デュタステリドでも同程度の頻度で報告されています(Olsen EA, Kaufman KD, et al. 1998. PMID: 9777765; Kwon OS, Eun HC, et al. 2010. PMID: 20605255)
- 勃起機能障害(ED):いずれも数%以下の頻度です(Olsen EA, Kaufman KD, et al. 1998. PMID: 9777765; Kwon OS, Eun HC, et al. 2010. PMID: 20605255)
- 射精障害:まれに報告があります
デュタステリドはDHTをより強力に抑制するため、理論的には副作用の発現率がやや高くなる可能性がありますが、臨床試験では両者の副作用プロファイルに大きな差はなかったと報告されています(Gupta AK, et al. 2024. PMID: 38725143)。
いずれの副作用も、服薬を中止すれば通常は回復するとされていますが、まれに持続するケースも報告されています。気になる症状が現れた場合は、速やかに処方医にご相談ください。
半減期の違い
フィナステリドの半減期は約6〜8時間であるのに対し、デュタステリドは約3〜5週間と非常に長いです。このため、デュタステリドは服薬を中止した後も長期間体内に残存します。この特性は、副作用が出た場合に薬の効果が抜けるまで時間がかかることを意味します。
どちらを選ぶべきか:判断のポイント
薬剤の選択は、患者様の症状の進行度や生活スタイルによって異なります。それぞれの薬が適している方の特徴をご紹介します。
フィナステリドが向いている方
- 初めてAGA治療を始める方:第一選択薬として推奨されることが多いです
- 副作用のリスクを最小限に抑えたい方:半減期が短いため、万が一副作用が出ても比較的早く体内から排出されます
- 費用を抑えたい方:ジェネリックの選択肢が豊富です
デュタステリドが向いている方
- フィナステリドで十分な効果が得られなかった方:より強力なDHT抑制により、追加効果が期待できます
- より高い発毛効果を求める方:メタアナリシスでフィナステリドを上回る効果が示されています
- 医師と相談の上、切り替えを検討している方
ガイドラインの推奨
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」では、フィナステリドおよびデュタステリドのいずれも、男性AGAに対して推奨度A(強く勧める)とされています(日本皮膚科学会 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)。
治療を始める前に知っておくべきこと
AGA治療を安全に進めるために、事前に確認しておきたい重要な注意事項があります。
女性・お子様への注意
フィナステリドおよびデュタステリドは、いずれも女性への投与は禁忌です。特に妊娠中の女性が本剤に触れること(経皮吸収の可能性)は、胎児の生殖器発育に影響を与えるおそれがあるため、取り扱いには十分な注意が必要です。
献血の制限
デュタステリド服用中の方は、最終服用から6ヶ月間は献血ができません。フィナステリドの場合は1ヶ月間です。これは半減期の違いに起因しています。
効果を実感するまでの期間
いずれの薬剤も、効果が実感できるまでに通常3〜6ヶ月かかります。ヘアサイクルの正常化には時間が必要であるため、最低6ヶ月は継続服用することが推奨されています。
治療効果を最大化するには
フィナステリドやデュタステリドなどの5α-還元酵素阻害薬は、ミノキシジル(外用薬)との併用によってさらに高い治療効果が期待できます。詳しくは[AGA治療の基本と選び方(JP-N-AGA-P1)]をご覧ください。
AGA治療は早期開始が重要
AGAは進行性の脱毛症です。毛包が完全に萎縮してしまうと、薬物療法による回復は困難になります。「薄毛が気になり始めた」と感じたら、できるだけ早い段階で医師に相談し、適切な治療を開始することが重要です。
noah™では、オンライン診療を通じて医師がお一人おひとりの状態を確認し、最適な治療プランをご提案しています。自宅にいながら手軽にAGA治療を始められるため、忙しい方やクリニックへの通院が難しい方にもご利用いただけます。
よくある質問(FAQ)
以下に、患者様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。
Q1. フィナステリドとデュタステリドを併用してもいいですか?
いいえ、同じ系統の薬剤であるため、併用は推奨されていません。どちらか一方を医師の指示のもとで服用してください。
Q2. フィナステリドからデュタステリドに切り替えるタイミングはいつですか?
フィナステリドを6ヶ月以上服用しても十分な効果が得られない場合に、医師と相談の上で切り替えを検討するのが一般的です。
Q3. ジェネリック薬品でも効果は同じですか?
ジェネリック医薬品は、先発品と同じ有効成分・用量・効能効果を持つものとして厚生労働省から承認されています。効果に大きな差はないと考えられますが、添加物の違いにより体質によっては合わない場合もあります。
Q4. 服薬をやめるとどうなりますか?
いずれの薬剤も、服用を中止するとDHT抑制効果がなくなり、AGAが再び進行します。治療効果を維持するためには継続的な服用が必要です。
Q5. 20代でもフィナステリドやデュタステリドは服用できますか?
はい、成人男性であれば処方は可能です。ただし、未成年の方には処方されません。若年層でAGAの兆候がある場合は、早めに医師に相談されることをお勧めします。
関連記事: [AGA(男性型脱毛症)とは?原因・症状・治療法を徹底解説(JP-N-AGA-P1)]
本記事の内容は2026年4月時点の情報に基づいています。最新の医学情報については、担当医にご確認ください。


.webp)






