マンジャロ・ウゴービとは?
マンジャロ(チルゼパチド) 米国イーライリリー社が開発した週1回投与の注射薬です。世界初のデュアルGIP/GLP-1受容体作動薬として、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の2つの受容体に作用します。日本では2型糖尿病治療薬として承認されており、肥満治療への応用については医師の判断のもとで行われています。
ウゴービ(セマグルチド2.4mg) デンマークのノボ ノルディスク社が開発した週1回投与の注射薬です。糖尿病治療薬として広く使われているオゼンピック(同一成分)の高用量製剤で、慢性的な体重管理を目的として開発されました。GLP-1受容体のみに作用します。
作用機序の違い:「デュアル作用」の意味
GLP-1受容体作動薬の主な作用:
- 胃の排出を遅らせ、満腹感を持続させる
- 脳の食欲中枢(視床下部)への作用により食欲を抑制する
- 血糖値に応じたインスリン分泌を促進する
- グルカゴン(血糖を上昇させるホルモン)を抑制する
チルゼパチドのGIP受容体作動作用は、これらの効果に加えてさらなる代謝改善をもたらす可能性があります。GIPはもうひとつのインクレチンホルモンであり、GLP-1との協調作用によって、体重や血糖管理に相乗効果が生まれると考えられています。また、GIP受容体の刺激は、高用量での消化器系副作用を軽減する可能性も示唆されています。
臨床研究データ:STEP 1試験 vs SURMOUNT-1試験
医薬品の効果を理解するうえで、臨床試験のデータは重要な参考情報となります。ただし、試験結果はあくまで集団における平均値であり、個々の患者への効果を保証するものではありません。
STEP 1試験(セマグルチド2.4mg)
糖尿病のない肥満・過体重の成人1,961名を対象に、68週間にわたって実施された試験です。
- セマグルチド2.4mg群の平均体重減少率:14.9%
- プラセボ群:2.4%
- 5%以上の体重減少を達成した割合:約86%
出典:Wilding JPH他。N Engl J Med. 2021;384(11):989–1002.
SURMOUNT-1試験(チルゼパチド)
糖尿病のない肥満・過体重の成人2,539名を対象に、72週間にわたって実施された試験です。
| 用量 | 平均体重減少率 | |------|--------------| | 5mg | 15.0% | | 10mg | 19.5% | | 15mg | 20.9% | | プラセボ | 3.1% |
10mgを使用した群では、91%以上の参加者が5%以上の体重減少を達成しました。
出典:Jastreboff AM他。N Engl J Med. 2022;387(3):205–216.
重要な注意点: 上記の数値は異なる試験から得られたものであり、試験デザインや対象集団が異なるため、単純な直接比較はできません。個人の効果は試験結果と大きく異なる場合があります。
投与スケジュール
両薬剤とも、週1回のペン型注射器による皮下注射です。
ウゴービ(セマグルチド)の増量スケジュール:
| 投与期間 | 用量 | |---------|------| | 第1〜4週 | 0.25mg | | 第5〜8週 | 0.5mg | | 第9〜12週 | 1.0mg | | 第13〜16週 | 1.7mg | | 第17週以降 | 2.4mg(維持用量) |
マンジャロ(チルゼパチド)の増量スケジュール:
| 投与期間 | 用量 | |---------|------| | 第1〜4週 | 2.5mg | | 第5〜8週 | 5mg | | 第9〜12週 | 7.5mg | | 第13〜16週 | 10mg | | 第17〜20週 | 12.5mg | | 第21週以降 | 15mg(維持用量) |
チルゼパチドは最大用量に達するまで約20週かかる増量スケジュールとなっています。これは副作用を管理しながら安全に用量を上げるための設計です。
副作用について
どちらの薬剤も、最も多く報告されている副作用は消化器系の症状です。これらは主に増量期に現れやすく、時間とともに改善していくことが多いとされています。
| 副作用 | セマグルチド(STEP 1) | チルゼパチド(SURMOUNT-1) | |-------|----------------------|--------------------------| | 悪心(吐き気) | 約44% | 約33% | | 下痢 | 約30% | 約23% | | 嘔吐 | 約24% | 約13% | | 便秘 | 約24% | 約36% |
対処法の例: 少量ずつ食事をとる、脂肪分の多い食事を避ける、十分な水分補給を行うなどが副作用の軽減に有効とされています。
使用できない方(主な禁忌):
- 甲状腺髄様がんの既往歴または家族歴がある方
- 多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の患者
- 妊娠中または妊娠を希望している方
- 重篤な膵炎の既往がある方
副作用や禁忌の詳細については、必ず処方医にご相談ください。
どちらが自分に向いているか
薬剤の選択は個人の健康状態・体重減少の目標・既往症・生活スタイルなど多くの要素によって変わります。以下は一般的な参考情報であり、医師の判断に代わるものではありません。
チルゼパチド(マンジャロ)が考慮されうる方:
- 2型糖尿病やインスリン抵抗性を合併している方——GIP受容体作動による代謝改善効果が期待できる
- より大幅な体重減少を目標としている方
- セマグルチドで十分な効果が得られなかった方
セマグルチド(ウゴービ)が考慮されうる方:
- Ozempicなどのセマグルチド製剤を以前に使用し、耐容性が良好だった方
- 心血管リスクの低減を重視する方——SELECT試験では心血管イベントの低減が示されている
- 増量期間がより短い製剤を希望する方
どちらの薬剤も共通の前提:
- 医師による定期的な診察・モニタリングが不可欠
- 食事療法・運動療法との組み合わせで最大の効果が期待できる
- 長期的な継続が求められる治療であり、自己判断での中断は避けるべき
費用について
日本では、GLP-1受容体作動薬を肥満症治療に使用する場合、保険適用の条件があります(高度肥満症かつ内科的治療の必要性がある場合など)。自由診療での使用も可能ですが、費用は診療機関や用量によって異なります。
自由診療の場合、月に数万円以上かかることも珍しくありません。継続的な薬物療法に加え、医師によるフォローアップ、栄養指導などを含む包括的なプログラムが、長期的な成果に繋がりやすいとされています。
筋肉量への影響に注意
GLP-1受容体作動薬による体重減少には、脂肪だけでなく筋肉量の減少も含まれる可能性があることが指摘されています。筋肉量を維持するために、適切な蛋白質摂取(体重1kgあたり1.2〜1.6gが目安)と定期的な筋力トレーニングを組み合わせることが推奨されています。
まとめ
マンジャロ(チルゼパチド)とウゴービ(セマグルチド)はいずれも、医学的に認められた肥満治療の選択肢です。作用機序・臨床データ・投与スケジュール・副作用プロファイルにそれぞれ違いがあり、どちらが「より良い」かは個人の状況によって異なります。
大切なのは、薬剤の選択は必ず医師との相談のもとで行うこと。そして、薬物療法を生活習慣の改善と組み合わせることで、より持続可能な結果が得られやすくなります。
医師に相談する
GLP-1系注射薬による体重管理に関心をお持ちの方は、Noah Japanにてオンラインでの医師相談を承っています。個人の健康状態を踏まえた上で、適切な治療法かどうかをご一緒に検討いたします。
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本サービスは医師による診察に基づく処方サービスです。診察の結果、処方できない場合もあります。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の医薬品の効能・効果を保証・推奨するものではありません。医薬品の使用は必ず医師の指導のもとで行ってください。記載されている臨床試験の結果は特定の条件下での集団データであり、個々の効果を予測するものではありません。
参考文献: 1. Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2021;384(11):989–1002. 2. Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2022;387(3):205–216. 3. Lincoff AM, et al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes (SELECT trial). N Engl J Med. 2023;389:2221–2232. 4. Ryan DH, et al. Tirzepatide versus Semaglutide in Adults with Obesity. NEJM Evidence. 2023.





